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(私ひとりずっと頑張り続けたこと、全部、受け止めてもらっているみたい。)
その日私と黒川はそろって仕事を休んだ。
藤中さんにはわびの置き手紙を置いて。
(逃避行みたい)
私は黒川さんと公園のベンチに座っていた。
手をつないだまま、肩に頭をのせて、頭を撫でてもらっていたのだ。
「黒川さん、ごめんね、弱くて。本当はこんなこと、拒否しないといけないのに。
貴方の優しさに甘えて。ほんとにだめだよね。私」
ずっとずっと寂しかった。人の温もりに飢えていた。
だから乾いた土に水が染みこむように、黒川さんの愛が私に染みわたっていく。
(ああ・・・もう戻れない)
知らないでいれば耐えられたのだ。
「俺がわるいんだ。貴方の弱ってるところにつけこんだ。美咲さんは何も悪くない。」
そういってなお強く手を握ってくれた。
(あたたかい・・・人ってこんなに暖かかったんだ)
黒川さんからじわりと温もりが伝わってきて、心地よかった。
「もう一度言わせて。俺は美咲さん、舞花が好きだ。愛しているんだ。お願いだから、この気持ちを拒まないで」
真剣な瞳で私を見る。
「私は、まだ貴方のことが好きなのか分からない。ただ、人恋しくてこうしているだけなんだよ?それでもいいの?」
「かまわない。少しずつでいい。俺のこと好きになって」
そう言うと、黒川さんはそうと顔を近づけて、私に口づけをした。
最初は触れるだけ
2回目は唇をついばみ、
最後は唇の間からあたたかなものをもぐりこませて長い口づけをした。
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