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「あ・・・黒川さんだめ。まだ、私の気持ちが貴方に向いてないのにこんなこと。」
「呼んで、優って」
「優・・・」
頭の芯がしびれて麻痺して
身体も燃えるようにあつかった。
「ねえ、今日はこのまま、俺の家に来て。」
優はそう言うと、私の手を取って歩き始めた。
ひゅうと冷たい秋風がふく
私が少し寒そうにすると、自分が来ていたカーディガンを私に掛けてくれた。
「あったかい。優の匂いがする」
私がそう言うと、優は満足そうに微笑んだ。
木は紅葉し始めて、枯れ葉がくるくると舞っている。
秋なのだ。
優と出会った季節に再会して、こうして二人歩いている。
「優・・・いいの?もう戻れないんだよ?」
私は思い直してほしくて、もう一度問いかけた。
「どうして?今、人生で最高に幸せな時なのに、戻りたくない。このまま進んでいきたい」
優はきっぱりと言い切ると、「いこう」そう言って、手をつないで歩き始めた。
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