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日常
私は家に帰るとすぐに夕飯の支度に取りかかる。
今日も太一は外で部下と食事をしてかえるから、私一人分の食事
最初こそ戸惑ったものの、慣れてくると、自分が好きな物を好きなように作れるので
結構楽しんでいた。
「きょうは大好きなパクチーをたっぷり入れたフォーにしよう」
私はパントリーから乾燥フォーを取り出し、おゆで湯がき、
その間にナンプラーや香辛料で味付けしたベトナム風チキンスープを作る。
仕上げに生のトムヤムクンをたっぷりいれて、そこにゆでたフォーを加えて完成。
「んん~いい香り!太一はこの匂いが苦手って言うから私一人の時しかたべられないんだよねえ」
太一は私と過ごす時間がほとんどないから毎日パクチーでもいいかもね。とすこし自虐的なことを考えながら、出来上がったチキンフォーを器に移してダイニングテーブルに運ぶ。
二人専用のこのダイニングテーブルは太一の強い希望で購入したのだ。
「二人で食事するんだから、これくらいがちょうどいいよ」
「でも、子供が生まれたら手狭になっちゃうよ?」
そう言うと太一はキョトンとした顔をして
「子供なんて生まれないよ?だって夫婦二人で生活していくんだから。子供はいらない」
そう言い切って、二人用のダイニングテーブルを購入したのだ。
それ以来、このテーブルを見ると気が滅入る。
「子供・・・ほしかったな」
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