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もちろん私だってすぐに諦めたわけではないのだ。
結婚して一年間はどうしても子供がほしい。世話は私一人でするからと、太一に懇願し続けた。
だが、かえってくる言葉は、
「念のためにピルも飲んだ方がいいね、君の思いが強すぎて、うっかり出来てしまったら大変だから」
それだけだった。
そうして1年目がすぎてからは、行為自体なくなって今にいたるのだ。
「きっかけを作ったのは私なんだよね」
フォーを一口すする。
じわりと暖かいチキンの風味がひろがり、
つぎにパクチーのみずみずしさを感じる。
「こんなに美味しいのに。食べず嫌いで人生損してるよ。太一は」
優だったら、このフォーを一緒にたべてくれるだろうか。
優だったら、私との子供をほしいと思ってくれるだろうか。
気がつくと優のことばかり考えてしまう。
「駄目よ、優にばかりよりかかっちゃ。自分でしっかりたつのよ」
私はそう呟くと、フォーを一人ですすり続けた。
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