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「舞花、今日はなんだかいつもと違うね」
太一が食事を食べている間、私は紅茶を飲みながら太一の対面に座っていたが、
突然そんなことを言われてしまった。
「そうかな?いつもとどう違うの?」
「なんだか、幸せそうだなって、俺が帰ってきたの、そんなに嬉しい?」
「ん・・・そうだね」
私が幸せそうな顔をしているというならば
それは優と過ごした時間のおかげだ。
ここで嘘をついても優には気付かれないだろう。
だけど、なぜか、嘘をつくことができなかった。
「そういえば太一に報告があるの。私ね、ショッピングモールの花屋でアルバイトを始めたのよ」
そう言った瞬間、太一は氷のような冷たい眼差しで私をみた。
「アルバイト?どうしてそんなことする必要があるんだ。小遣いだって多めに渡してあるし、家は金にも困っていない。働く必要なんてないだろう。」
「どうしたの?太一、怖いよ」
「悪い、でも、働くことで舞花が変わってしまうのが怖いんだよ、外の世界はね、綺麗なことばかりじゃない。お前がそんな世界にそまってしまうのが怖いんだ。」
太一は私から視線をそらさずそう言うと、お茶をグイと飲み干した。
「アルバイトは許可できない。すぐにやめてほしい」
「そんな!私だって働きたいの、お願い。ずっと家にこもりきりだと気が滅入るのよ。短時間にするし、家事だって手を抜かないから。」
私は必死に食い下がった。
だけど太一はそんな私を見据え、
「駄目だ」
それだけ言うとバスルームへ向かってしまった。
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