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店内は綺麗に整えられ、スーツやシャツ、ハンカチや靴下、タイピン、カフスボタンなどが並んでいた。
「渡してもらったのは紺色だから、紺色のハンカチがいいかな」
私はハンカチコーナーに着くと、一枚一枚の色や柄を見ながら、
黒川さんに似合いそうな物を選び始めた。
「あ、これって」
その中の一枚に、上品な紺色に、葉っぱの刺繍が施してあるものがあった。
「お花屋さんだから葉っぱなら喜んでもらえるかも。値段も1500円でお手頃だし、
気軽に渡せる感じだから、これにしようかな。」
思いのほか素敵な品が見つかって、私はウキウキしながらお会計に並んだ。
「こちらご自宅用ですか?」
上品なスーツを身にまとった店員はハンカチ1枚の購入でも丁寧に対応してくれた
「いえ、プレゼント用でお願いします」
少しの後ろめたさを胸に、そう告げると、包装紙やリボンの色を選ぶこととなった。
すべて紺色では芸がないから、えんじ色の包装紙に黒いリボンという、少し大人っぽい雰囲気に包んでもらう。
(喜んでもらえるかしら)
私は男性経験が少なく、ちゃんとお付き合いしたのは太一だけたったから、別の男性に贈り物をすることに、少なからず緊張していた。
お店を出ると、また、来た道を戻る。
彼のいるお店に向かって。
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