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私と優が出勤すると、いつもはまだ出勤していないはずの藤中さんが待ち構えていた。
「おはようございます。黒川さん、ちょと、美咲さんとお話があるので、少しだけはずしてもいいですか?」
「ああ、まだ開店まで時間があるからいいよ」
「え!!いやいや、急いで準備した方がいいんじゃないですかね」
「いいから・・・黙ってついてきてください」
私はぐいぐい藤中さんに引きずられて店舗裏の路地裏に連れ込まれてしまった。
ガン!!!
藤中さんは周りに人気がないことを確認したあと、拳を私の顔の横の壁にたたきつけた。
「あれほど言いましたよね?私が黒川さんのこと好きだって。貴方も興味がないって言ってましたよね?」
「・・・はい」
「それなのにどうして、ひどい、貴方がフリーだったらまだ許せる、いや殺すけど、夫のいる身で黒川さんとどうにかなっちゃうなんて。ぶち殺す」
藤中さんは殺気だっていて話し合いが出来る状態ではなかった。
「このこと、夫に言うの?」
私は一番恐れていることを聞いたのだが、
藤中さんはフンと鼻で笑った。
「そんなことしたら、黒川さんまで悪者になっちゃう。絶対あなたたちのことは他の人に漏らしたりするもんですか。苦しむのはあんた一人で十分なのよ!おばさん!」
藤中さんは怖いけど、二人の関係がばらされることがないと分かってほっとした。
「ごめん・・・こんなことになるなんて。でも、私もね、黒川さんのこと愛し始めている。中途半端な気持ちで関係を続けようとしているわけではないことを分かってほしいの」
そう、私は優を愛し始めていた。
昨日太一に触れられたときにはっきりと自覚してしまったのだ。
もう私は優以外の熱を受け入れることが出来ないと。
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