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お店はそこそこ繁盛しており、ひっきりなしにお客様が来ていた。
「あれ、新しい店員さん?」
エプロンを着けて、花が入っている段ボールを抱えてはいってきた青年に声をかけられた。
「おとといから入った美咲舞花です。よろしくお願いします。」
「美咲さんかあ、俺は早見尚人28歳独身です!よろしくね」
「早見さん、私と同い年なんですね、あ。ちなみに私は結婚しています。」
「残念!美咲さんみたいな清楚な人、好みなんだけどなあ。既婚者かあ」
じくりと胸が痛む。
既婚者だから対象外、普通はそうなのだ。
(優は私が既婚者でもいいと言ってくれているけど、本当なら対象外なんだよね)
「ぼうっとしてどうしたの?」
早見さんは手早く段ボールをおくと伝票を差し出した。
「サインください」
「ごめんなさい、ちょっと考え事を、サインここでいいですか?」
「そうそう、ここ、あれ?美咲さんていい匂いしますね、香水つけてる?」
気付かないうちに距離がちかくなって、匂いを感じるほどになっていたようだ。
「ううん。多分シャンプーじゃないかな?」
「すごくいい香りだね。ほんとに残念、離婚したらすぐに教えて!俺アタックしに行くから」
そう言うと早見さんは屈託なく笑い、
またね、といって店を後にした。
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