砂のお城

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帰り道は私も太一は無言だった。 昨日仕事のことでもめたのに、今日は一転して職場に挨拶にきた太一のことがわからなくて怖かった。 (まさか、私の気持ちの変化に気がついているの?優とのことにも・・・) 私は後ろめたさから落ち着かなかったが、 太一の一切を拒絶する雰囲気から、話しかけることはできなかった。 家につくと、太一はすぐにバスルームに入ってしまったので、私は夕飯の準備にとりかかった。 (今日はちょっとつかれちゃったから、あったかいクリームシチューとサラダにしよう) お肉は鶏モモを使って、タマネギを飴色にいためる。 クリームは牛乳と小麦粉とバター、塩こしょうをあわせて手作りする。 そこに牛乳を入れて、濃厚なクリームシチューを作った。 煮込みにはいろうとしたとき、太一がバスルームから出てきて私の元にやってきた。 「おいしそうだね、今日は俺の好物にしてくれたんだ」 (そういえば太一の好物だったけ、すっかり忘れていた) 「ん・・・そうだね」 太一が私の料理を食べなくなって長いので 好みなんてすっかり忘れてしまっていた。 思いのほか嬉しそうなそぶりをみせる太一に罪悪感が募ったが、私は笑顔で、 「もりつけるから、着替えてきて、タオル一枚だと風邪引いちゃう」 そう言った時だった。 太一が私をうしろから抱きしめたのだ。
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