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片付けをすませて、シャワーを浴びて、
私は自分の部屋にこもろうとしたときだった。
「舞花、ちょっとまって」
太一に呼び止められてしまった。
「優、さっきは意地悪いってごめん。ただ、拒否されて腹がたってしまったんだ。」
「いいの、私も大人げなかった」
太一は私に歩み寄って、優しく私を抱きしめた。
「風呂上がりっていいな。清潔でいい匂いがする」
私は背筋がこおった。
以前だったら、きっと幸せにおもっただろう抱擁が、苦痛でたまらなかった。
(ああ・・・もう優以外の人に触れられるのがたえられないんだわ)
まだ数日しかたっていないのに、出会った時から優に惹かれていた。
太一のことがあんなに好きだったのに、
今はもう、優しか愛せなかった。
「ごめん、抱きしめないで、私に触れないで」
そう言って腕を抜け出そうとしたが、太一はいっそう強く私をだきしめた。
「男か・・・」
冷ややかな声が頭上からふってきて、私は固まった。
「ごめん」
私は優のことで嘘をつきたくなくて、素直に白状してしまった。
「舞花が俺以外の男になびくなんてな。こんなことなら・・・もっと・・・」
そう言うと同時に床に押したおされる。
がつんと後頭部をしたたかに打って、そこで私の意識は途絶えた。
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