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肌に布団の生地がすれる。
その心地いい感触に私は目をゆっくりと開いた。
「いったあ・・・頭痛い」
昨日打ち付けた後頭部がまだ痛む。
半身だけそろりと起こしたが、ひどいめまいと頭痛で起きあげることができなかった。
「目が覚めたようだね。」
太一がエプロンをつけ、小さな鍋をもって部屋に入ってきたのは私が半身を起こしたのと同時だった。
「太一・・・」
「優、昨日はかっとなってひどいことしてごめん。でも、俺は優を大切に思っているから、拒絶されて悲しかったんだ。どうかわかって」
そう言うと、サイドテーブルにおかゆをのせて、
ベットのふちに腰掛けた。
「食べられそう?」
「うん、いただくね。」
頭は痛いけど、お腹はすいていたから、一口食べる
じわりとあたたかいお粥が身体に入っていく。
「美味しい」
私はお腹がすいていたこともあって、ぱくぱくとお粥をたべすすめた。
「よかった、食べられるだけでいいよ?無理しないで」
太一はそう言うと私を優しい眼差しでみつめ、微笑んでくれた。
(昨日は夢でも見ていたのかしら、あんなひどい暴力をふるう人がこんなに優しいわけない)
私は少し混乱したが、純真に太一の優しさを受け止めようと思った。
「ところで、太一に話があるの・・・わ・・・たし・・・」
頭痛が再発したのか、急にひどいめまいに襲われて、私は手に持っていたおかゆを取り落としてしまった。
「どうしたの?優。布団も服もよごれてしまったよ」
私の様子を見て太一は微笑む。
それはぞっとするくらい優しい微笑み。
その瞳はほの暗い炎がともっているようによどんでいた。
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