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「お待たせしました。」
黒川さんは手際よく仕事を片付け私の元にやってきてくれた。
「お仕事中にすみません。実は先ほど貸していただいたハンカチを汚してしまったから、代わりにこれを・・・」
私はそう言うと先ほど選んだハンカチを手渡した。
「開けてもいいですか?」
「もちろんです。差し上げたものですから」
以外だった。お礼を言って終わりなのかと思っていたから。
子供みたいに目を輝かせながら包みを開ける黒川さんを、可愛いと思ってしまった。
「ふふ、黒川さんて子供みたい」
「実はそうなんです。他の人からは感情がわかりにくいって言われているけど、俺、子供っぽいんですよ」
目を伏せる。
黒川さんの長いまつげがかすかに揺れていた。
「あ・・・葉の刺繍がある」
案の条、黒川さんは葉の刺繍にすぐ気がついてくれた。
「嬉しい・・・」
見ると、黒川さんは少しだけ目尻にしわがよってくしゃりとわらった。
(あ・・・こんな顔をして笑うんだ)
綺麗な微笑みだった。
私は思わずそのめのしわを指でなぞった。
「美咲さん?」
(え!!私なにしてるの!!!)
無意識だったのだ。そんなことするつもりなんてなかったのに。
「ごっ・・・ごめんなさい。可愛い笑顔だったから、つい」
黒川さんはまた同じ笑顔で笑う。
「美咲さんにそう言ってもらえたら、嬉しいです」
(なんだろう、そわそわする)
私はまた、そのしわに触りたい衝動に駆られるがぐっとこらえた。
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