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天使の輪
じゃらりじゃらりと鎖の音が響く
無音の世界に音はそれひとつ。
私はベットに横になって寝返りをうった。
その目線の先には扉が取り外され、リビングが見える部屋の入り口があった。
私が隠れて足かせに細工出来ないように、私の部屋も、トイレもお風呂も、扉が外されてしまったのだ。
(太一がまさかここまで私に執着していたなんて・・・)
てっきり外で後輩と浮気をしていると思っていたから、予想外すぎてまだ現実を受け止めることができなかった。
「ねむれない・・・当たり前だけど・・・すこしお酒飲もうかな」
私はふらふらキッチンに向かって、白州のウイスキーを氷を入れたグラスに注いだ。
一口飲むとじわりとアルコールがしみる。
「おいしい」
ぽつりつぶやきながらちびちびお酒を飲んだ。
(そういえば、包丁を使えば私の足かせも外せるかも)
太一の部屋の扉を見る。静かだから眠っているのだろう。
音を立てないように、そうっとシンク下の収納を開いた。
そうすると、そこにあるはずの包丁はなく、それどころかキッチンばさみもピーラーすらなかった。
「刃物はすべて処分したよ」
背後から太一の冷たい声が振ってきたのは私がため息をついたのと同時だった。
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