天使の輪

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朝食を食べ、食後のコーヒーを飲み終えた時 私は太一に片付けを申し出た。 「舞花の手が荒れるのが嫌だから、やらないで」 そう言いながら、コーヒーミルを棚にしまう。 「そっか、残念。だって私、これからずっと家にいるんでしょ?何かしていないとスタイルが保てないよ」 太一がなるべく興味をもってくれそうな話をふるが、 「必要ない、昼食は手で食べられるものを用意しておくから、それを食べてね」 そう言われて台所を追い出されてしまった。 私は自分の部屋に戻ると、机の引き出しやクローゼットを確認した。 刃物はすべて没収され、残されているのは手帳や本だけだった。 (よかった。一番大事なものは残っていて) 私は手帳と本を手に取ると、ベットに腰掛けてページをめくる。 手帳とカバーの間に手を滑らせると、そこにはカチリと固い感触が。 (カード、昔からの習慣でこうして隠していたけど、まさか役にたつなんてね) 私は母と父が浪費家で、家のお金やカードを守るために、幼いころからいろんな工夫をしていたのだ。 (もし逃げられたら、これで逃走資金が確保できる) 一筋の希望がみえた瞬間だった。
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