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「舞花、いってくるね、くれぐれもいたずらしちゃだめだよ?いつも見守っているからね」
(見守るか・・・監視の間違いじゃないの?)
私は作り笑顔で太一を見送った。
家から会社は電車と徒歩で45分
今日はそれに加えて、午前中は会議で12時までは太一は自由が利かないはずだ。
(逃げるなら、いましかない)
私はさりげなさを装って、残されていた手帳とノートをひとまとめにして
ネグリジェを脱いで、一番シンプルな黒のワンピースに着替えた。
時計をみると太一がでてからまだ15分しかたっていない。
(まだ早い。今は逃走のシュミレーションをして心を落ち着けないと)
私は逃走のシュミレーションをするため、まずは棚にあるコーヒーミルを見た。
固い豆をひけるくらいだから、中には固い歯が入っているはずだ。それを使って足かせを外せるかもしれない。
もしこれが成功したら、本と手帳をもって玄関まで走る。
靴はすべて処分されてしまったから、はだしでもいいからとにかく走る。
あとは警察に助けをもとめるしかないだろう。
本当は優のもとにすぐにでも行きたいけど、こんな恐ろしい事態に巻き込みたくなかった。
「優、私負けない。きっと、きっとあなたのもとに戻るから」
私は決意を胸にキッチンにむかった。
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