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時計を見ると、太一が出かけてから70分経っていた。
(そろそろ大丈夫ね)
私はそっと戸棚を開けてコーヒーミルを取り出す。
このミルは鋭利な刃がついている手引きのミルで、力のない私でも簡単にひくことが出来るから気に入っているものだった。
カチャカチャとネジを外し、ミルを分解する。
そうして刃を取り出すと、残りの部品を棚に隠し、寝室に移動した。
少しでも見つかるリスクを減らしたいから、布団に潜り込むと、革製の足枷に刃をたててギリギリと引いた。プツリと少しの切れ目が入ったが、すべて切断するにはまだまだかかりそうだった。
(急がないと、太一に気付かれたらおしまいだわ)
私は震える指先に活をいれてギリギリと刃を当て続けた。
「いた。」
焦りすぎて指先を切って血がしたたる。
でもここで諦める訳にはいかない。
「耐えるのよ、舞花、がんばって」
自分で自分を励まして刃を当て続けること80分。
なんと、本当に足枷が切れたのだ。
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