天使の輪

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「やった!外れた」 そろりと皮の足かせをはずすと、私の左足首は赤く腫れていた だけど今はそんなことにかまっている暇はない。私はカバンに入るだけの服と下着、手帳と本を詰め込んで玄関に走った。エレベーターでは万が一遭遇した時逃げ場がないから、非常階段を駆け下りる。 5階から1階まで短い時間のはずが、何時間もかかったように錯覚してしまった。 「はあ・・・はっ。あと少しで1階・・・」 私はカンカンと階段を駆け下りる。裸足の足が痛いけれど、泣き言を言ってはいられなかった。 ようやく1階の扉にたどり着き、そうっと隙間から外の様子をうかがう。 幸い誰もいないようだったから、滑るようにそろりと外にでた。 (この近くに100円均一があるから、そこでサンダルを買った方がいいかな) 私は走って走って100円均一の店までやってきたが、まだ営業時間外だった。 (そんな・・・じゃあ、コンビニ、にはうっていないか。もう裸足でいいから警察にいこう) 私は走って少し離れた場所にある交番に駆け込んだのだった。 「すみません!!どなたかいらっしゃいませんか?」 「はい、どうされましたか?」 私が駆け込むとすぐに警察官の男の人が出てきてくれた。 まだ若い、30代前半くらいの切れ長の目をした綺麗な人だった。 「助けて下さい。夫に監禁されているんです。今、必死に逃げてきたところなんです」 警察官は驚いた顔をしたが、すぐに真剣な面持ちになり、席をすすめてくれた。 その時、私の左足のあざに気がついたようで、 「そのあざはどうされたのですか?」 そう聞いていくれた。 「夫に足枷をはめられていたんです。それを、コーヒーミルの刃を使って切断して、逃げてきたんです。」 私は血だらけの手で顔を覆う。 警官は急いで救急箱を持ってきて私の指の怪我に絆創膏をはり、足首には湿布を貼ってくれた。 「とりあえずはこれで我慢して下さいね、事情聴取が終わり次第病院に送っていきます。」 そう言って笑ってくれた。
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