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その後は簡単な聴取が終わり、私は少し休むといいと奥の個室に布団を引いてもらって横になった。
疲れていたのだろう。私はぐっすり眠ってしまった。
「つまが・・・・はい・・・・」
「いまおく・・・・ています」
どれくらいたったろう。窓の外を見ると、もう夕暮れになっていた。
(私ずいぶん眠っていたのね。でも、おかしい・・・なんで病院に連れて行ってくれなかったんだろう)
嫌な予感がする。
私は扉の隙間から駐在所の方をそっと盗み見た。
そこには太一が人の良さそうな微笑みを浮かべて警察官と談笑している姿があった。
(手を回されていたんだ・・・逃げないと)
私は音を立てないように鞄をつかむと、そっと窓をあけ、そこから外に飛び出した。
警察は信用できない。
じゃあどこに逃げればいいの?
私は恐怖と不安でいつの間にか泣いていた。
(負けちゃ駄目、逃げて、いつか優に再会するのが目標でしょう。しっかりしなさい!)
自分に活をいれて夕暮れの街を走る。
いつ追っ手がくるかも分からないから、後ろを振り返りながら、走り続けた。
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