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途中のお店で私の靴を買うことになった。
そのお店は、リーズナブルで可愛い靴が並んでいて、
逃亡中の身ながら、楽しい気持ちになってしまった。
「ねえ、こっちのミュールとっても可愛い!でも沢山歩くからヒールのない靴にしないとだもんね。じゃあこっちのベージュのパンプスなんてどうかな?」
私があまりにはしゃぐから、優はふふと笑って頬にキスをしてくれた。
「俺もそのベージュのパンプスいいと思うよ。買ってあげるからかして」
「大丈夫だよ、少しだけどお金持ってるし」
私は手帳に隠していたカードから現金を全額下ろしていた。働いていたときの貯金はたったの100万円。ぜいたくしなければなんとかしばらくは暮らしていける額だったので、靴くらいは自分で買わないと、そう思ったのだ。
「お金の問題じゃなくてね、今はあいつの買った物を身につけているのが悔しいんだよ。本当は服も全て買い換えてあげたいけど、それにはまず遠くに逃げてからじゃないとだから、せめて靴は贈らせてほしい」
優がそこまで考えてくれていたなんて。
私は嬉しくて涙があふれた。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えます。」
そう言うと優は嬉しそうに微笑んでくれた。
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