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するりと襟元を探っていた優は、何かを見つけたようで、
自分の鞄からハサミを取り出すと襟をシャキリときりとった。
「え!優、何するの?」
私は驚いて固まった。もしかして優も狂ってしまったの?そう不安に思っていたときだった。
「やっぱり・・・これのせいで居場所がばれたんだ」
優が取り出したの襟に隠されていた超小型GPSだった。
「服は全部あいつが準備したんだよね?今他の服も出せる?」
私は無言で頷くと服を全て引っ張り出し、優に手渡す。
それをひとつひとつ丁寧に調べ、
一つ、また一つとGPSを抜き出していった。
「うそ・・・太一がここまでするなんて。」
私はショックで固まってしまったが、優は冷静にGPSを1つずつ丁寧にハサミで切って壊していった。
「これで当面は大丈夫だけど、次の駅で降りて別の列車に乗り換えよう。」
私はコクリと頷く。
「これでもう、大丈夫だよね?私達、北海道にいけるんだよね?」
優は何も答えない。
私達はわずかな光にむらがる蝶のように
頼りなげに進むしかなかった。
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