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電車が走っている間、私達は無言だった。
不安になる言葉しか口に出来なかったから。
電車が次の駅に止まると、私達は急いで電車を降り、駅のゴミ箱にGPSを捨てた。
私はその時、一緒に太一との結婚指輪をゴミ箱の上に置く。
(さようなら、太一)
私は心のなかで太一に別れを告げ、優と手をつないで駅の構内を歩く。スマホで調べると、少し時間がかかるけれど、新幹線以外の電車でも北海道に行けるらしいのだ。
「いけるところまで行ってそれから宿に泊まって、また進もう」
優はそういうと不安を打ち消すようにわらった。
「優ありがとう。私、優と一緒だから怖くないよ。きっと、たどり着けるよ」
「そうだね。きっと。信じよう」
そしてまた沈黙。
幸せなはずの逃避行なのに、重い空気が漂う。
太一がどうか私を諦めてくれますようにと祈りながら
私達は前に進んだ。
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