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「簡単にお話したところ、問題もありませんからこちらで働いていただきたいと思います。いつから出勤できますか?」
「ええと、お店がよければ明日からにも」
私は前のめりになって答えた。
また働けることが嬉しくて。
「ふふ、わかりました。シフト、入れておきますね。今後のシフト調整は藤中さんとも相談して決めましょう」
「藤中さん?いまカウンターにいる可愛い子ですか?」
「ええ、うちの看板娘で、彼女目当てに花を買いに来る客もおおいのですよ」
黒川さんは立ち上がって私の方に手を差し伸べる。
「せまいから、手を」
私は男性からそういうことをしてもらったことがないから、
緊張しながら手をとった。
そのとたん黒川さんはぎゅうと手を握って、力を入れて私を引き上げてくれた。
するりと黒川さんの親指が私の手をなぞり、そっと離れていく。
(え・・・いまのは?)
驚いて固まった私に微笑みながら、黒川さんは
「藤中さんを紹介します」
そう言ってさっさと事務所を出て行ってしまった。
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