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「久瀬 勇様ですね、お待ちしておりました。お泊まりの部屋は4階ですから、こちらをどうぞ。大浴場は今は終わってしまっているので、申し訳ないのですが、部屋のバスルームを利用して下さいね」
女性はそういうと部屋のキーを渡してきた。
それは昔ながらのプラスチックの四角い棒にチェーンで鍵がついているものだった。
「小さなエレベーターだね。なんだか、ワクワクする」
「舞花は子供みたいだね。でもその気持ちちょっとわかるよ」
二人乗り込むとぎりぎりの小さなエレベーターで4階までのぼる。
私達の部屋は廊下の突き当たりにあった。
「ええ!ホテルなのに引き戸だよ!」
部屋について驚いた。このホテルは民宿のように扉が引き戸なのだ。
「あはは、優は絶対驚くと思って、ここにしたんだよ」
優はいたずらっ子のように笑う。私は優の思惑通り驚き、次いでワクワクした。
ここに入ったらどんな部屋になっているのだろうと。
からりと部屋に入ると、広めの玄関に下駄が沢山置いてあり、その横にはトイレとシャワールームがあった。
そして奥に進むと畳の部屋に布団が敷いてあり、ちゃぶ台、奥には二脚の二人がけソファが置いてある。
「本当に旅館みたい。不思議!」
「なんか風情があっていいね。安い宿だけど、良い宿だ」
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