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夜が始まると少しずつ客足が増えてきた。カウンターの中であたしはバーテンダーとして動く。
夜叉もバーテンダーとしてカウンターに立つが、ウルフはバーテンダーやウエイターというよりは、どちらかと言うと用心棒として店にいる事が多い。
蒼い瞳を持つあたしは、何故か女性客に人気だ。
「ねえ刹那、何か飲みやすいカクテル作ってよ」
「あたしにもお願い!」
『2人に合うカクテルね。確か今日は満月だっけ…分かった、ちょっと待ってて』
店では「蒼焔」は「刹那」と呼ばれている。
さすがに本来の名前でバーテンダーの仕事をしている時に他の組織の人間がいれば、大事になってしまうので別の呼び方をしているのだ。
あたしは手早くシェーカーに材料を入れると、シェイクをする。
小刻みなリズムが辺りに響き渡る。2つのカクテルグラスに紫色の液体を注ぐと客の前に出した。
『お待たせしました。「Blue Moon」です。でも、少し待ってね。
飲む前にグラスを見てごらん。月が見えるから』
そう言ってあたしはウインクをする。2人の客はあたしの言う通りにしてカクテルを眺め、それから口にする。
夜叉は氷をアイスピックで削りながら、あたしと客とのやり取りを見て微笑んでいる。
「それにしてもマスター、刹那が来てから店が華やかになったな。
奴のシェーカー捌きも様になってきてるし」
「俺にだってカクテルは作れるさ。ただ、こいつの接客には何故か負けるんだよ…」
「マスターの教え方が良いからですよ。スコッチのおかわりはいかがですか?」
「頼むよ。マスター、よくこんな良い「男」見つけてきたな」
「たまたまだよ。今は運が味方してくれているだけだ」
常連客が声を掛けると、あたし達は何気ない返事をしながら相手をする。
そんな時にBluetoothから声が聞こえてきた。
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