車を駆る「紅焔」

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『人使いの荒い相棒だな…車に乗ってからでも良かろう?』 「死翠じゃないだけましだ。あいつが出てきたらこの店が修羅場になる」 『奴ならやりかねんな…死翠を出すにはMasterの言葉が必要だ』 「でもお前等、店開ける前に言い争いをしてただろう?」 『蒼焔が承服していない事があるらしい。 Masterに直接言えないから、死翠に詰め寄る。結果、我が仲裁に入る事になる。 人格とは難儀なものだ』 「ウルフが言うには鏡越しに喧嘩してたって言うが…鏡を使ってお前等は話をするのか?」 『蒼焔と我だけだった時からそうだが…何かおかしいか?』 「普通はそういう事は無いんだよ…」 夜叉が突っ込みを入れる。あたしはソファを立ち上がるとカウンターからグラスを取り出し、 氷を入れてロンリコを注ぎ、夜叉の前に置く。 『そうか?我等では日常茶飯事だ。屋敷の自室ではよくやるぞ?』 「普通は簡単に人格交代とかはしないからな。それにしても鏡越しに人格が会話とはね」 「何か難しそうな話してんな。紅焔、準備できたぞ」 『……スーツに着られてるな、天狼。ネクタイが曲がっておる』 「普段着ないんだから、仕方ないだろ?お前等みたいに毎回スーツって訳じゃないし」 ウルフがバックヤードから戻ってきたが、ネクタイが曲がっている。 それを見たあたしはウルフのネクタイをを直す。夜叉が笑いをこらえていた。 「兄貴、何がおかしいんですか?」 「いや…お前が紅焔にネクタイ直されてるとか、なんか紅焔が「弟のスーツを直す兄貴」って感じに見えてな…」 『屋敷では普通にやるぞ?それとも、これも普通はしないのか?』 「弟って…兄貴、ひどいっすよ!紅焔、行くぞ」 『やれやれ…手の掛かる「弟」だ。出かけて来る』 「気を付けて行って来いよ。何かあったらすぐに連絡して来い」 機嫌の悪いウルフが店を出ると、あたしは後を追うようにして店を出た。 フェラーリの鍵をウルフから受け取ると、ロックを解除して2人で乗り込む。 イグニッションを回すとエンブレムの跳ね馬の如くエンジンが唸りをあげる。 アクセルを踏むと道路を一気に駆け始めた。
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