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「ちくしょー」
「ウェイド……もうやけ酒はそのぐらいにしておいたらどうだ?」
木製のジョッキで蜂蜜酒を飲む俺に、冒険者ギルド併設の酒場のマスターが呆れた表情を浮かべた。
「これが飲まずにはいられるかってんだ! マスター、もう一杯!」
「飲むのは百歩譲るにしても、金はあるのかよ……」
小言を呟きながらも、マスターは新しい蜂蜜酒をジョッキに注いだ。
「ういー」
その蜂蜜酒を、俺は一気呵成に喉の奥へと流し込んだ。
荒れる俺の様子を見て、スキンヘッドのおっさんマスターは苦言を呈す。
「ウェイド。そろそろ新しい仕事でも見つけたらどうだ?
別にSランクパーティーじゃなくたって、他の雇い手はたくさんあるだろう」
「……だったんだよ」
「あ?」
「憧れ、だったんだよ。あのパーティー」
「…………そうか」
長い無言の後の相槌を、俺は「話の続きを聞かせろ」という意味だと、受け取った。
蜂蜜酒の入ったジョッキを置いて、続ける。
「俺が小さい頃から、カッコ良くてさ。
ダンジョン攻略は常に最前線を走ってるし、どんな冒険者でも敵わない。
冒険者の都市アインで、最強無敵のSランクパーティー」
「…………」
俺の言葉を、マスターは他の客が飲み終えたジョッキを洗いながら聞いていた。
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