第1話:追放

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「あのパーティーに入るために、どれだけの努力をしてきたことか。  ガキの頃から常に剣術の道場に通って腕を磨いたし、魔法だって習いに魔法学院に通ったこともある。  盗賊とかレンジャーの、色んな冒険技術を覚えてさ。  苦心して、やっと入れたパーティーだったんだ」  静かな微笑をたたえたまま、酒場のマスターは俺の話を聞いていた。 「お前さん(ウェイド)には、合わなかった。それだけだろ」 「冒険者の頂点に立ってみたかった。  どんな景色がするんだろうって。どんな高揚感があるんだろうって。  最強になりたい。男なら誰だって思うよな?」 「そうだな、ウェイド」 「ガキみたいに惚れて、ガキみたいに夢見てた。  それが、一ヶ月で潰えちまった。  なぁ、夢を失って、どうやって生きていけばいいんだ、マスター?」  蜂蜜酒を一気にあおって、俺はカウンターの上にジョッキをドン! と置いた。  マスターはこう言った。 「……人は誰しも、生まれ持った才能で、生きるステージが定められているのだそうだ。  ああいうトップの世界を生きることができるヤツは、ほんの一握りだ。  それ以下の人間はみんな、社会の歯車として働くしかない。  冒険者だってそうだろう」 「分かってる。分かってるけどさぁ……」  ジョッキを持つ手が震える。  もう諦めたはずだった。  決別したはずだったのに。  最強のパーティーで、誰からも憧れられる冒険者になることを。  なのに、なんでこんなに心がかきむしられるんだろう?  俺は……未だ、夢見るガキなんだろうか……?
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