28人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな俺に対し、マスターは木製のジョッキに新しい蜂蜜酒を無言で注いでくれた。
「……これ飲んだら、もう帰れ。今日の酒代はいいから」
「……あぁ。いつもすまん」
はぁーっ……、終わったのか。
冒険者として夢見てきたすべてのことが、ここで終わったんだ。
俺は甘くてほろ酔いできる蜂蜜酒をグイグイ飲んだ。
「ぷはぁーっ、美味かった。サンキュ、マスター。
話聞いてくれて、助かった」
「いつでも来い。ただし、酒代を持つのは今日限りだ」
「おう」
それじゃ、と席を立とうとしたところで、やっと気づいた。
離れたカウンターに座っていたローブの女が、こちらをじっと見ていることに。
ローブのフードを目深にかぶった奥に、綺麗な碧眼が見えた。
流れるような金沙の髪が、立ち上がる動作にしたがってさらりと流れ落ちる。
「冒険者の、ウェイドくん?」
「あ、あぁ……そうだが?」
「良かった。ずっと探してて、話せる時を待ってたんだ」
にっこり微笑んで、その女は言った。
「俺になんか用か?
お前も冒険者なら、俺の噂ぐらい聞いたことあるだろ」
「そんなの関係ない。私はキミに、依頼をしに来たんだ」
小さな胸を誇って、女は言った。
「私はミレニス。
私と一緒に、パーティーを組んでくれない?」
「……はぁ? 俺にパーティー申請だぁ?
何が目的だ。『ソウルブレイズ』を蹴られた直後だぞ。
ギルドの奴らみんな、俺と関わりになりたがらない」
最初のコメントを投稿しよう!