第1話:追放

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「詳しくは言えないんだけどね。  私は事情持ちでパーティーに入れないから、ウェイドと組んで天帝の塔を攻略したいんだ」  ミレニスはそう言った。  ――天帝の塔。  冒険者の都市・アインにある、百層を越す巨大なダンジョンだ。  このダンジョン内では強力な魔物が跋扈(ばっこ)し、ありとあらゆる素材がドロップする。  冒険者は普通、街道の護衛や商隊(キャラバン)の護衛、薬草の採取というFランク任務からこなして、冒険者生活をスタートさせる。  冒険者Eランクで害獣狩り・ゴブリン狩り、Dランクでオーガ狩り・ヴァンパイア狩りとステップアップして行き、Bランクからは天帝の塔――ダンジョンに潜って素材ドロップで大金を稼げるようになる。  天帝の塔に出てくる魔物は非常に強力で、Bランクからでないと潜ることができないとされている。  天帝の塔攻略者は、冒険者にとっての憧れだ。 「天帝の塔を目指したいのは分かるが、お前さぁ……」 「――ミレニス。私、名前は名乗ったけど」 「……ミレニス。お前、何ランク?」 「Fランクですが、何か?」  何か、じゃねえんだよ。  普通、Fランクの冒険者は天帝の塔に入ろうとすら思わない。 「一応、俺もBランク冒険者で天帝の塔の攻略経験ありだから言っとくけど、死にに行くようなもんだぞ」 「それでも。私は天帝の塔を目指したいの  何がなんでも、あそこに行くしかない」  俺が苦言を言ったが、ミレニスは青い瞳に力をいっぱいため込んで、断言した。  何か事情を抱えているな、そんな気がした。 「ウェイド。私とパーティー組んでくれない?」 「俺と組みたいって気持ちは嬉しいが……」  正直、世間知らずのFランクと、使えないBランクで一体何ができるんだって話だ。
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