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「詳しくは言えないんだけどね。
私は事情持ちでパーティーに入れないから、ウェイドと組んで天帝の塔を攻略したいんだ」
ミレニスはそう言った。
――天帝の塔。
冒険者の都市・アインにある、百層を越す巨大なダンジョンだ。
このダンジョン内では強力な魔物が跋扈し、ありとあらゆる素材がドロップする。
冒険者は普通、街道の護衛や商隊の護衛、薬草の採取というFランク任務からこなして、冒険者生活をスタートさせる。
冒険者Eランクで害獣狩り・ゴブリン狩り、Dランクでオーガ狩り・ヴァンパイア狩りとステップアップして行き、Bランクからは天帝の塔――ダンジョンに潜って素材ドロップで大金を稼げるようになる。
天帝の塔に出てくる魔物は非常に強力で、Bランクからでないと潜ることができないとされている。
天帝の塔攻略者は、冒険者にとっての憧れだ。
「天帝の塔を目指したいのは分かるが、お前さぁ……」
「――ミレニス。私、名前は名乗ったけど」
「……ミレニス。お前、何ランク?」
「Fランクですが、何か?」
何か、じゃねえんだよ。
普通、Fランクの冒険者は天帝の塔に入ろうとすら思わない。
「一応、俺もBランク冒険者で天帝の塔の攻略経験ありだから言っとくけど、死にに行くようなもんだぞ」
「それでも。私は天帝の塔を目指したいの
何がなんでも、あそこに行くしかない」
俺が苦言を言ったが、ミレニスは青い瞳に力をいっぱいため込んで、断言した。
何か事情を抱えているな、そんな気がした。
「ウェイド。私とパーティー組んでくれない?」
「俺と組みたいって気持ちは嬉しいが……」
正直、世間知らずのFランクと、使えないBランクで一体何ができるんだって話だ。
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