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「今日は挨拶代わりだったから、私がウェイドの酒代を払って帰ろうかと思ったけど、マスターのおごりならいいよね。
また明日、同じ時間にここに来るね。その時、良い返事だけ聞かせて」
「おい……」
それじゃ、と、俺の言う言葉も無視して、ミレニスはローブを翻して去って行った。
「なんなんだ、あいつ……」
「お前もやっとモテ始めたな」
マスターがくつくつと笑って、言った。
「黙ってろ、ハゲ」
「ハゲじゃねえ!?」
「ん? なんだこれ……」
ミレニスが座っていたテーブル席を見ると、忘れ物かペンダントらしきものが置かれてあった。
「ペンダント……? マジックアイテムか、これ」
手に取ると、ルビーの宝石が赤く輝く、魔法のペンダントだった。
「仕方ない……明日来るんなら届けてやるか……」
と、魔法のペンダントを持ち帰ろうとしたところで、それが強く激しく輝き出す。
「な、なんだ!?」
そのペンダントの輝きに呼応して、俺は本当の自分を思い出すことになる。
様々な情景が頭の中に流れ込んできた。
今より1000年も昔の、古代の時代に、ウェイドという俺が生きていたこと。
俺はその時代に、最強の魔導師だったらしきこと。
信頼できる仲間とパーティーを組んで、最難関ダンジョン・天帝の塔を最後までクリアした経験すらあった。
そうだ……思い出した。俺はたしかに、あのダンジョンを最後まで攻略したはずだった。
そしてそのクリアボーナスとして、破格の性能を持つ古代魔法と古代スキルを取得していた。
「古代魔法……」
すべての取得魔法を思い出して、古代魔法を使おうと思うと、使える感触がたしかにあった。
今ここで古代魔法を使うと酒場が壊れるからやめておくが。
でも、たしかに俺は、古代魔法が使える。
それは、現代の退化した魔法やスキルを遙かに凌駕りょうがする性能だ。
古代魔法に比べれば、現代の魔法はゴミ同然だ。
これがあれば、俺はまた『ソウルブレイズ』に戻れるのではないか……?
すべての戦闘技術と知識を引き継いだまま、俺は現代に転生したのだった。
しかし、なんで今になって、そんなことを急に思い出すのだろうか。
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