70人が本棚に入れています
本棚に追加
夕食、家族に今日見たものを話した
「そうか、西山さんとこの息子さんが」
とトォチャン
「就職が上手くいかなくて色々と苦労してたっては聞いてたわ」
これはカァチャン
トォチャンが険しい顔をして答える
「最近多いんだよ、若い子で。ほら、僕らが若い頃なんかより今の子達ってストレスが多いみたいだしな。邪気の排出が上手く出来ない子が増えてるみたいなんだ」
「慶太も、最近勉強頑張ってるからたまには息抜きしてもいいわ」
慶太とはボクだ
「え!じゃあ漫画読んでいいの!?」
カァチャンが複雑な顔をする
「漫画もいいけど、なんか健康的な事をしたら?ほらスポーツとか・・・」
~翌日~
朝のホームルーム前の教室はいつも通りガヤガヤしててうるさい
「おっすー、慶太」
「おっ、おはよう泉!昨日さ、家の近くで封印見ちゃったよ」
泉はボクと仲が良い、腐れ縁ってやつさ
「あー!ニュースでやってたよ、またダメになっちゃった奴が出たって。お前んちの近くだったのかアレ」
「そうなんだよ、それでさ、」
先生が入ってきた
「はいはいはい!!みんな黙って黙って!!ホームルーム始めますよー」
今日はいつになくテンションが高い竹谷先生
教室にもう1人、見知らぬ女の子が入ってきた
一目見てわかった、いや泉も、この教室のみんなもすぐにわかっただろう
「突然なんだけど今日からね!この子がウチのクラスに転入する事になりましたから!ホラ、自己紹介して」
竹谷先生に促され、言葉を発したくなさそうな、重い表情をしていたその女の子が口を開いた
「烏丸です、よろしく」
消え入りそうな細い声だ
「という事で、烏丸 天 (からすま そら)さんだ。みんな仲良くな!」
真っ黒のロングヘア、西洋人ような顔立ち、けれど瞳の色は青ではなく黄金色
そう、一目見れば誰もがわかる
この子は人間じゃない、天狗の子だ
烏丸はボクの隣の席になった、だがボクに挨拶をするどころか誰とも目を合わせようとしない
烏丸の頬を涙が伝うのが見え、思わずボクは声をかけた
「なぜ、泣くの」
この時、声をかけていなければ
いやあの時、公園で何も見なければ
ボクは何も知らず、ただ平凡な受験生になる予定だったんだ
最初のコメントを投稿しよう!