『 あ っ ぷ っ ぷ 』

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『 あ っ ぷ っ ぷ 』

年頃の女子には押しちゃいけないスイッチがある 僕の父さんが言ってた言葉だ そんな父さんも母さんと離婚している 原因は父さんの仕事関係だと聞いているけど、詳しいことは未だに分からない 警視庁陰陽課に勤めている僕の父親は確かに帰りが遅くなる事ばかりだ それに危険な仕事が多いらしい 今日は珍しく帰りが早い 一緒に晩御飯を食べるのは久しぶりだ 「そうか、お前の友達...その、けいすけ君ってのは、女心を解ってないな」 「けいすけじゃなくて、慶太!桂木 慶太(かつらぎ けいた)だよ!何回か会ってるでしょ?名前くらい覚えてよ」 「あ?ああ、スマンスマン、どうにもここ最近忙しくて、頭が混乱しちまってる」 ここ最近の父さんはいつにも増して忙しそうだ 会話をしていても、どこか上の空なのが分かる 「それで? 明(あきら)。その転校生の娘はどうした?」 「そのまま泣きながら帰っちゃったよ、転校初日の朝なのに。流石に慶太のヤツも焦ってすぐ追いかけたんだけどさ、いないんだよ、消えちゃったみたいに」 「最近の女子中学生は足が速ぇな」 「いや、たぶん...そう、大事な事を言ってなかった!その娘、普通の娘じゃないんだ!天狗の子なんだよ!」 「なに?天狗の子だと?」 「天狗って、その、飛ぶんだろ?そりゃ追いつけないワケだ」 「おい待て、その娘の名前は?」 少し上の空だった父さんがいきなり話に食いついてきた 「えっと...からすま、そら、とかって言ってたよ」 「烏丸・・・ 天!・・・そうか!来たのかこの街に!」 少し嬉しそうな父さんだが、僕は訳がわからない 「ホラ、父さんの相棒刑事いただろ?烏丸 風雄(からすま かぜお)。天ちゃんはソイツの娘だ」 「相棒・・・?半年前亡くなったっていうあの?」 そう、父さんには仕事上の相棒がいた 僕は会ったことはないけど、よく一緒に捜査や危険な仕事... 例えば、ダメになってしまった人の処理を任された時もよく一緒に行動すると話には聞いていた 「待って、でも僕、その風雄さんが天狗だって事知らなかったよ!?」 「ああ、言ってなかったな。別に隠す事でもなかったんだが、本人があまり知られたがらなくて」 少し気まずそうにする
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