Sの悩み

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Sの悩み

見た目はまぁ、悪くないというか、いい方なんだと思う。 俺の容姿の話だ。ぶっちゃけ美形だ。切れ長の目、すっと通った鼻、薄いがバランスのとれた配置の唇。走るのが好きなせいか、体形も一般人にしてはいい。 幼馴染には、「動かなければイケメン」と言われた。 そう。動かなければ。 問題は、俺の性格が、いわゆる「もぶおじ」なことだ。 興味があるのは性的なことばかり。好みの相手を見つけたら男女かまわずねっとりと視姦してしまう。 「なんで笑うときニチャァ……って音がすんの?」 と、幼馴染には不思議がられてしまった。もう、心のセクハラ度合いが、行動ににじみでてしまうのだ。 待って欲しい。発言に関しては、俺はかなり気をつけている。当然だ、自分がセクハラっぽいことを小学生の時から認識しているのだから。 でも行動や、表情に関しては、ムリだった。にじみでる。にじみ出てしまうのだ、もぶおじが。 そのおかげで一ヶ月前に広告会社をクビになり、昨日IT系の会社にやっと再就職できた。 クビ、再就職、クビ、再就職、そんなことの繰り返しだ。 何もしていないのに、なぜかセクハラで訴えられ、会社から解雇や穏便に自主退職を勧められてきた。 まあなんというか、俺の存在自体がセクハラなんだろう。いるいる、そんなやつ。いやいねーよ。世界中で探して俺だけだよ。オンリーワンだよ。 で、顔も経歴も悪くないので、書類を見てすぐ再就職が決まる。でも勤めだすと……というやつだ。いい加減定職に就きたい!就職活動はめんどい!! それと、もう一つ。この副業も、バレたらクビになる原因になっていた。 部屋の電気を消す。パソコンでスカイプを起動する。画面に女の顔が映った。こちらからは映像は行っていないが、事故が起こった時に身バレを防ぐためだ。意外とね、ストーカーになる客多いのよ、この仕事。 『ごきげんよう、ご主人様』 うわずった声がPCから流れてくる。 「いい子にしてたかい?可愛いシュガー」 はぁっ、と悩ましいため息を女性が漏らす。 足元に置いたノートパソコンで入金を確認する。お仕事開始だ。 「今日はナカでイけるようになろうね。出来たらご褒美をあげよう」 俺の副業とは、オンラインご主人様だ。女性で言えば女王様。SMクラブでの、職業Sである。
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