#3 ダウンタウンへ

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こんな時間に 乗り方もわからない子供が 地下鉄のホーム入ってゆく姿を、 駅員がアキれ顔で 見送った。 薄暗い地下鉄の、 ダウンタウン行きの プラットホームに 降りたとき ふと、 初めてオウジに 不安がよぎった。 ――  これから ドコに行く?     ・・金は どーすんだ?  今朝方 たたき起こされてからというもの、 ずっとイライラに支配されまくって、 気づくヒマもなかった オウジの心の奥の 黒雲が ムクムクと、湧き上がる。 ――この先どーなるんだ?          ・・・オレは     もう一度 歌えんのか・・? 『 いい気にならないことね。   アンタの代りなんて いくらでも見つけられるのよ 』 冷たく黒いモヤに包まれた オウジの心に、 メギツネ美津子の 言葉が浮かぶ。 『 ステージに立つと声が 出なくなるだなんて・・。 歌うことしか能のない フダツキが、 皮肉なもんだわね? 』 フン、と鼻で嗤って、 美津子は、次にデビューが決まっている ロック系アイドルグループの プロフィール写真の、チェックをつづけた。 『役に立たないボーカル一匹、 ナンのために 飼ってると思ってるの?  今アンタを抱えてるのは、 貴章の面目のためよ。    肩書きだけは、 まだウチの 社長なんですもの』 そう言って美津子は、 パープルがかったルージュの唇から メンソールタバコの煙を オウジに向かって、吐きつけた。 『 いったい貴章は こんなロクデナシ小僧のドコを 買ってるのかしら~?   才能なんて、あっても使えなければ ただの粗大ごみだわ。 ・・ああそう、 ゴミ同士で  慰めあってるのかしらねぇ?』 ――ナニ言ってやがる  そのゴミ亭主に、未練があんのは オマエだろ・・! オンナとして 扱われなくなった美津子が、 夫の貴章と オウジの関係を 疑っている事を知っていて、 オウジはわざと、イミ深にふるまった。
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