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それが、なんの力も持たなくなったオウジが
支配者である美津子にできる、
たった一つの 抵抗だったのだ。
そんなことでしか、
あのオンナを見返せなくなった自分に、
一番イラ立ち、
愛想を尽かしているのは、オウジ自身だった。
胸の中で、
どうにもできない 炎がくすぶってる。
――チクショウ・・・ッ
その時、
薄闇に埋もれた オウジの左頬を、
煌々と 灯りが照らし出した。
ヘッドライトを光らせ、ゴォーーッと唸りながら、
列車が プラットホームに突入してくる。
眩しさに、思わず目を閉じた。
心の奥底で
声がする。
――・・・こんなところで、負けられっかよ!!
オウジは、切れ長の目を見開き、
闇の中から 顔を上げた。
――あのメギツネも、クソな暴力教師も、
オレをコケにした奴ら
全員ブッちぎってやる!
テッペンに 上り詰めてやんだ!!
目の前で開かれた
ダウンタウン行きの 列車のドアの中へと
オウジはミリタリーブーツの
固い靴底を、踏み入れた。
列車のドアが
闇の女王の手のように、
両側からオウジを 体内に抱え込む。
――ジョートーだッ!
どこまでも行ってやるッッ!!
オウジを乗せた6番トレインが、
ダウンタウンに向けて走り出した。
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