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――どこでもイイ
まずは夜を 明かせる場所だ。
明るくなったら
安い宿でも 捜せばイイ・・。
マンハッタンの土地勘は
全くないオウジだったが、
どんなトコでも、どうにかなるという
根拠のない 自信があった。
幼くしてあちこちの街で 暮らした体験が、
その胆力を生み出してるのだ。
マンハッタンの道路網は、
碁盤の目のようだ。
地図上の横に走る通りを 何丁目(ストリート)と表し、
ダウンタウンに 南下していくほど
数字が小さくなる 。
縦に走る通りは 何番街(アヴェニュー)と表示し、
5番街を中心に、
左側がWで表す ウエストサイド、
右側がEで表す イーストサイドだ。
オウジの乗った6番トレインは、
マンハッタンのイーストサイドを
33丁目、28丁目、23丁目と、
どんどん南下して行った。
――どっか オールナイトの店でも探すか。
金曜の夜(フライデーナイト)だし、
ダウンタウンなら そんくらいあんだろ、フツー・・。
オウジは降車する人の多かった 14丁目で、
とりあえず、列車を降りてみた。
地下鉄の階段を上がって 地上に出ると、
夜はしんしんと 深さを増している。
さらに南下した凍てつく空に、
ワールド・トレード・センターの ツインタワーが
突き刺さるように そびえ立っていた。
「うおっ・・・!」
絵葉書やポスターで、何度か見たことのある
マンハッタンの象徴が、
今、オウジの前にある。
110階建て、417メートルの
やけにデカい建造物が 二つ並んで立っていた。
スケールデカイ。
何もかも。
「あそこが
マンハッタンの 外れなのか・・・?」
ふうっと 息をひとつ吐き
オウジはオレンジ色の街頭に、照らされた夜の街を
歩き始めた。
ミッドタウンにいたのは つい数分前、
距離でいえば 5キロ程度だろう。
なのに
―― ・・・ 違う・・・・!
ここは、空気が ハズんでる。
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