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店内には、
アーリーアメリカン調のテーブルとイスが並び、
その向こうに 小さなステージがあった。
けっこうなトシの
黒人のカルテットが 演奏しているのは、
オウジの母親もよく歌っていた
オーソドックスな ジャズのナンバーだ。
「ちっ・・・ヘッタクソ!」
日本語でツブヤき、オウジは
立ち飲みのカウンターまで歩いた。
古びた棚にスコッチや バーボンが並んで
なんかアメリカってカンジ。
とりあえず、知ってるヤツを注文。
「ワイルドターキー ソーダ割り」
ひょろっと背の高い短髪の
白人バーテンダーが、
チラリと 横目にオウジを見て、
アメリカのTVドラマかよって位の
オーバーアクションで 肩をすくめた。
「家出してきたガキに出す酒はねえんだ。
近頃 サツも ウルサくなってよ」
「ガキじゃねーよ
アンタが 老いぼれてるだけだろ 、オッサン」
「じゃあパスポート 見せてみな」
「んなもん 家に置いてきちまったよ」
「ウソつけ
ほらよチビ、コーラでも飲んでな」
世界中から流れ着くワルガキどもに
いちいちかまっていられない、とばかりに
バーテンは無表情のまま、オウジの前に
コーラの入ったグラスを置いた。
カウンターにいる 他の客達から、笑いが起きる。
そして 次の瞬間、バーテンダーの顔に
コーラの黒い泡が ブチ撒けられた。
「ぶはっ・・!
このガキ・・ッ 何しやがる!!」
「水やってだよ?? モヤシ野郎っ
痩せコケて
干からびちゃってるぜぇ ガハハッ!
・・・っと、
アメリカにモヤシってあんのかな?
ま、いっか
Fuck you! Asshole! Mother fucker!!」
とにかく知ってるスラングを並べたて
ゴタブンに漏れず 中指を突き立てる。
自分の1、5倍はありそうな大男にケンカをふっかける、
見かけない チビっ子東洋人のハデな登場に
店の中はザワついた。
このままではバーテンダーの面目も、丸つぶれだ。
「おもしれぇ小僧だな オマエ・・・」
長身のモヤシバーテンダーが、
カウンターの向こうから
オウジの胸ぐらを
つかもうと手を伸ばしてきた、その時だ。
「お待たせしちゃって ゴメンなさい!」
オウジの肩に、
1人のオンナが手を置いた。
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