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「マスター、彼は私と待ち合わせだったのよ。
ごめんなさいね
まだNY(こっち)に 慣れていないものだから・・。」
思わぬ展開に、 オウジはオンナをじっと見た。
ブラウンヘアをヘアピンでとめ、
緩めのタートルネックのセーターに、
ママが買ってきたみたいな ジーンズ。
微笑みかけてくる唇から、
子供のようなスキッ歯を のぞかせている
白人女だ。
白いセーターの上からでもわかる、
鏡もちかよオマエはな腹。
彼女はオウジに向かって、目くばせした。
――なんだコイツ・・・ 超ドンくせぇ オンナ・・。
「ホントかよ、ジェシー?
ちっ・・
お利口さんのオマエが言うなら、そういうことにしてやるさ」
「ありがとうマスター。
ね、貴方も仲直りして!」
どこの誰であろうと、
“チビ”は オウジのホットボタンである。
が、このどんくさオンナの登場によってハタと気づくと、
周りからの 明らかにガキ扱いな目つきが、
思っきしのアウェー感を醸してた。
ちっ。
モヤシバーテンダーが 無言でバーボンソーダを作り、
オウジの目の前に、トン、と置いた。
しょーがねえ 許してやるよ。
オウジも、無言でそれを啜った。
喉を冷ややかなバーボンが、ちりちりと通り過ぎる。
「アナタ、ニホンカラキタノデスカ?」
ジェシーと呼ばれたオンナは、
人懐こい笑顔と
ちょいヘンな発音の日本語で、オウジに話しかけてきた。
オウジは、オンナの顔をまじまじと見返した。
――日本人びいきの アメリカ女か・・?
人の良さそうな表情(カオ)で、
頬をピンクに染めている。
都会慣れしていない、メガネの奥の おせっかいな目つき。
毎週日曜の朝、教会に行って、
せっせとボランティア活動に いそしんでそう。
――こいつ、 イケそうじゃん・・。
うまくすれば、
このオンナのところに転がり込める。
こんなオンナ、シュミじゃねーけど
野宿よりはマシだろ。
オウジは、
彼女に とっておきの笑顔で微笑んだ。
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