#1 深夜のマンハッタン

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―― 着いたのか ?  ニューヨーク・・。 体中が、じとっと イヤな汗で濡れていた。 チクショウ、さっき見た 夢のせいだ。 成田を出てから14時間。 エコノミークラスの狭いシートと、 JFK空港から 1時間のバスに揺られて 17歳のオウジでも、さすがに体中がギシギシだ。 淀んだ空気に 閉じ込められて、 しかも、またあの夢を見て。 気分は、サイアクの極み。 ―― マンハッタンか・・。   オレにはジョートーな 流刑地じゃねーかよ! 突然降ってわいた、 この世界一の 大都会との巡りあわせ。 窓の外は 薄く霧がかかってる。 バスの中のエアコンで 暖められた空気が オウジの体に、 ねっとりと まとわりついていた。 乗客はまばらだ。 23時を回ろうとするこの時間、 観光客はほとんどいない。 マンハッタンの住人か、金を持たない学生か、 オウジのようなワケアリの輩が こんな時間に 空港に着いてしまい、 仕方なくバスに揺られるだけだった。 ふとカンジた視線に 横を見ると、 通路の向こうに  よく太ったビジネススーツの、白人男が座ってる。 ポテトチップとバケツサイズの アイスカップを抱えながら カウチに寝そべってTV見てんです~ とか絵に描いたようなその男は、 オウジのアタマのテッペンから 爪先までを ジロジロと眺め、 あからさまにヤ~な顔をした。 それもそのハズ。 西洋人からみれば ただでさえ幼く見える 東洋人のオウジは、 どこから見ても  チンピラまがいの 家出小僧なのだ。 黒のライダースジャケットに 黒のダメージジーンズ。 履きならしたミリタリーブーツを  前の座席の背もたれに ドカッとのせて、 自分のシートを倒し、ふんぞり返ってる。
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