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右の耳に3つ、
左の耳に4つのピアス。
そして、トンガった心そのままの
鋭利なスタッズを バシバシつけた
黒皮のチョーカーやブレスレットに、
ドクロやスパイダーを模った、
シルバーのアクセサリーを これでもかと身に着けて
黒髪を逆立て、
乱れた前髪のスキマからは、
これまた漆黒の ナマイキな瞳が
ギラギラと光を放ってる。
ホワイトカラーどころか
一般ピーポー目線からも
オウジは充分、ウサンくさい。
―― んっだよ あのデブ・・!
ビジネスマンなら タクシーん乗れっつんだよ
クソドケチ!
もっとも、くしゃくしゃな
ドブネズミ色のスーツの こんなヤツ、
空港からマンハッタンまでの距離を
悠々とタクシーに乗れるミブンには 見えねーか。
――ウダツの上がらねぇ
白ブタ野郎
お前は一生 オンボロバスに揺られてな!
オウジも、白ブタ野郎のアタマのテッペンから
爪先までを眺め、
ハナで嗤い返してやった。
バスは鈍いエンジン音をたてながら、走る。
マンハッタン島に近づいたバスは、
よくNYモノの映画に出てくる、
何百年もたっているような 古い橋を渡らずに、
無造作に、トンネルに滑り込んで行った。
――あっ 何にも見えねーじゃん
んだよ、つまんねーな! バス代返せ
アタマの中は
不平と不満で ハチきれそう。
充分な金も無く、行き先も定かでない。
でも、フシギだ。
オウジの胸の中で、ずっと燻ぶっていた何か
やがてビッグバンを起こしそうな何かが
うごめき出している。
世界の中心 マンハッタン。
今、彼はその入口に、飲み込まれて行った。
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