物言えば唇寒し秋の風

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   休日の午前十時──当直から外出証をもらった向井 時弥(むかい ときや)は、警衛にそれを見せて駐屯地をあとにする。  そこから少し歩いて駅に着くと電車に乗り、目当ての店の前で待ち合わせの相手を待つ。しばらくすると長身の男が時弥に軽く手を上げてゆっくりと近づいてきた。 「すまん」 「大丈夫、待ってない」  同僚の八尾 杜斗(やお もりと)が到着し、オータムフェアと題されたのぼりを横目に自動ドアをくぐる。
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