物言えば唇寒し秋の風

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 昨今のミリタリーブームに伴い、この雑貨店でも期間限定でやり始めた企画だ。  適当に揃えた感は否めないものの、店主のビギナーズラック的なチョイスに思いも寄らぬアイテムがあったりするところが魅力の一つなのかもしれない。  支給品があるじゃないかと言われるだろうが、自腹で揃えたいものだってあるのだ。  共に二十代半ばを過ぎた彼らは同級生とか幼なじみとかそういうものではなく、元々なんの接点もなかった。しかし、とある事件がきっかけで知り合い、それから二人はよくつるむ仲になる。  かなり馬鹿げた事件ではあったが命に関わるものだったことは確かで、大きな怪我もなく気の合う友人が出来たことは喜ばしい。  彼女のいない二人はそれに焦る訳でもなく、人生を大いに楽しんでいる。  しかし、 「姉さんに見られたら絶対、誤解されるよなあ」  並べられたミリタリーグッズを前にしてぼそりとつぶやく。
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