物言えば唇寒し秋の風

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 時弥の姉は結婚して実家を出ても、可愛い弟を使い走りにしつつ常に気に掛けている。少し歳の離れたしっかりした姉のせいもあり、両親は時弥の面倒をみることがほとんどなかった。  その甲斐あって、時弥は立派に姉にこき使われる弟に成長した。料理が得意なのも、スポーツが得意なのも、自衛隊に入ったのだって姉にそそのかされ──もとい、ひと言で決まったものである。 「可愛い弟を変な女に取られるくらいなら、彼のような男性に寝取られた方がいいわ」と言うくらいには、姉は杜斗を気に入っている。 「ただの友達だって言ってるのに」  こんな光景を見られようものなら、 「デート?」  と言われても不思議じゃ──ん? 「姉さん!? なんでここに」 「チラシ入ってたから気になって」
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