物言えば唇寒し秋の風

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 姉さんの家はこの店からはかなり遠いのに、そんな遠くまでチラシ入れに行く気力はいらないと思います。  姉の茜はミリタリーに興味があるという訳じゃない。チラシを見てふと、自衛隊に入った弟のことを思い出し、なんとなく店を訪れただけなのだ。 「上手くやってるじゃなーい」 「何をかな」 「今日はデートでしょ?」 「じゃないです」 「あんたたち、お似合いよ」 「意味がわかりません」 「いつか、隣にこんなにいい相手がいたなんてって思うときがくるわ」  なんの悟りなんだろう。俺にはわからない。 「いい? 進展したら絶対にあたしに報告するのよ」 「恋人が出来たらね」  姉の言葉を逸らしつつ答える。
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