物言えば唇寒し秋の風

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「あ、茜さん。こんにちは」 「杜斗くん、こんにちは」  他の棚を見ていた杜斗が戻ってきた。百七十センチの時弥と百八十五センチの杜斗が並ぶと、まさに理想の身長差だわと思わず茜の顔が緩む。  何をにやけているんだろうといぶかしげに見やり、知らないふりをした。 「杜斗くん、またガタイがよくなった?」 「それほど変わっていないと思います」 「だよね」 「まあそれくらいがいいわよね」  時弥には──という言葉を弟はスルーする。 「あたしはこれから予定があるから、じゃあね。時弥をよろしくね~」  笑顔で店を出て行く。  「相変わらずだな。お前の姉さん」 「うん……」  杜斗は騒がしいなという意味合いだろうけど、姉さんはいつまで俺と杜斗の関係を誤解し続けるのだろうか。
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