問題は日常的につき

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 しかし、そんな問題だらけのギルドであるにも関わらず、何故未だに大きな顔をして看板を掲げられるかというと――依頼成功率が九〇%を優に超えているからなのだ。残りの一〇%弱の足を引っ張っているのは慣れていない初心者のみであり、その者達も半年ほど経てば失敗はほぼ零となる。  何かしら粗相を起こしたとしても依頼は完璧に遂行する、そんな彼ら、彼女らを街の者達は笑いはするが馬鹿にはしない。ある意味、悪いところも含めて街の誇りとも言える愛されたギルドなのだ。  そして話は酒場の一角に戻るのだが。此処にもまた、問題は起こせど依頼成功率は驚異の一〇〇%を誇るこのギルド唯一の存在が――。 「聞いてんのかテメェ! 俺は――」  男の罵声は途中で中断され、凄まじい速さで後方へと吹き飛んで行く。巻き込まれたテーブルの冒険者は男同様目を回し、周囲の者達は我関せずと冷や汗を流しながら口を閉ざす。 「チッ……がーがーとツンツルテンが吠えやがって。終いにゃ殴っちまうぞ?」  ものの数秒で再び静寂が支配したギルド内で、この場に似つかわしくない〝幼く高い声〟が響き渡った。その出所は言わずもがな。  深々と椅子に腰かけていた子供――リオは俯いていた顔を表に上げた。美しく整った〝少女〟のようなあどけなさの残る顔つきは、知らぬものからしたら只の美少女。しかし間違えてはいけない。彼女――いや彼は紛れもなく男。長い睫毛にサファイヤ色の瞳、血色の良い唇と頬。更には艶やかな白髪が綺麗に切り揃えられたショートヘアーであったとしても、彼はれっきとした男なのだ。  リオはそんな端整な顔を僅かに歪ませながら、右腕を正面に突き出して男へ宣った。 (いやいやいや。もう手、出してんじゃん)  そんな光景を頬杖ついて眺めていたビビッドは、内心そう考えながら頬を引き()らせる。恐らく、その場に居合わせた全員が同じことを考えたのだろう。彼女の視界に入る冒険者たちは皆揃ってビビッドと同じ表情を浮かべていた。
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