問題は日常的につき

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 リオはもう一度舌打ちを響かせると、重たい腰を「よっこらせ」と持ち上げ、床で伸びている男に冷たい視線を送る。しかし、そんな格好良さげな光景であってもリオの身長は一二〇程しかなく、それを補うように椅子の上に立つものだから、周りはどうしても暖かな視線を送ってしまう。 「僕は依頼書の通り仕事をこなした、それだけだよ。それ以上の依頼であれば追加を掛ける必要がある。僕達はボランティア団体じゃあないんだから」  数秒の沈黙後、そう吐き捨てたリオは勢いよく椅子の上から飛び降りると、もう用事は済んだと男には目もくれず受付へと歩を進めた。  周囲の冒険者達は「何の事だ?」と疑問に感じつつも、二次災害は御免だと無理やりテンションを上げて飲みを再開する。すると瞬く間にギルド内は先程までの喧騒を取り戻し、いつもの姿へと元通り。  そんな常と変わらぬ光景に自然な笑みを溢したビビッドは、これから始まるであろう面倒事の処理に肩を重たくさせつつも姿勢を整えた。 「ビビ、これ」  すると数秒も経たずに、カウンターから顔を覗かせたリオがビビッドへ依頼書を一生懸命腕を伸ばして提出して来た。  その姿は先程の冷酷さなど嘘だと思えるほど可愛らしく、ビビッドは微笑みつつ垂れてきた前髪を耳に掛け直し依頼書を受け取った。 「ふふっ、ご苦労様。今日はどうしたの?」  彼が子供扱いを嫌う事を知っていても、顔を赤くして背伸びする姿を見てしまうとそうせざるを得ない事に内心謝罪し、ビビッドは優しい顔つきで依頼から先程の出来事までの経緯を質問した。 「んー、特に依頼自体はおかしいところはなかったんだ。いつものように解決して、報告して」 「うんうん」 「でもさ、報告終えて、さー宿屋に帰ろうって時だよ。急に呼び止められて、追加でお願いがあるーって。それで追加依頼ならギルドで話そうってことになってここまで来たんだけど……」  リオはそこまで言うと苛ついた表情で視線を落とし、小さく舌打ちを打つ。それに何となく察しがついたビビッドは、苦笑いを浮かべた。
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