12人が本棚に入れています
本棚に追加
非コミュ
四方八方低反発な部屋に閉じ込められて、かれこれ二週間が経過した。最初の頃は歩くたびに足が沈んで、その感覚になかなか馴染めずにいたけれど、今はすっかり慣れて心地よささえ感じる。先人は上手いことを言ったものだ。
――住めば都。
体育座りをして、手の甲の青筋を見つめていると、ミルが隣に擦り寄ってきた。
「なに見てんの?」
「これ」
浮き出た静脈を指差して答えると、ミルが「何が面白いの?」と訝しげに眉をひそめた。
「だって静脈が浮いてるってことはさ、そんだけ肉がなくなったってことじゃん。嬉しいから見てんの!」
喋っているうちにエキサイトしてきた。どうせ元々痩せてる人には私の気持ちなんて分らない。肥満体の人間には、手の甲にももちろん肉がついてて、静脈なんて見えないのだ。
「嫌なこと思い出させないでよね」
「ちょっと聞いてみただけじゃん、急に怒られても困る」
ミルが不満そうな目をして応酬してくる。
最初のコメントを投稿しよう!