12人が本棚に入れています
本棚に追加
二週間前の朝。意識がふと戻ったものの、長時間眠っていた頭と体を動かすのは至難の業で、私は数十分ずっと瞼を閉じ、今まで起きた出来事を反芻していた。
――高校に入った頃から、私は自分の肥満体型と、不細工な顔に悩まされ続けていた。うちの母親は私にとても甘い人で、ハンバーグが食べたいと言えば牛肉百パーセントのジューシーなハンバーグをこしらえてくれたし、スイーツが食べたいと言えば、私の好物ばかりを買い揃えてくれた。バニラアイスが上に載ったシナモンアップルパイ(680kcal)、ニューヨークチーズケーキブルーベリーソースと生クリーム添え(578kcal)エトセトラ。わざわざネットでお取り寄せしたり、デパ地下で買ってきてくれたり。別に市販の特売スイスロールでも良かったし、ハンバーグだって、牛肉と豚肉の合挽きで十分だったのに。
とにかく、私の望みには全力で応えてくれる優しい母親だった。勉強しろ、家事手伝え、部屋の掃除をちゃんとしろ等の小言も言わない。お嬢様育ちの専業主婦だから、余裕があったのかもしれない。中学時代の数少ない友達は、親がうるさくて堪らないと、よくぶーたれていた。
帰宅部で家事手伝いもせず、食べたいものばっかり食べまくっていたら誰でも太る。高校生になって、周りが「彼氏できた」と華やぐ中、私はぶくぶく太り、近寄ってくる男子は一人もいなくなった。男子は勿論、同性の子でさえ、肥満体の私とは友達になりたくないみたいで、話しかけてもくれないし、私から話しかけても「ふーん」とか「そうなんだー」で会話を続けてくれない。
最初のコメントを投稿しよう!