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救急車で病院に連れて行かれたのが四月十日だった。
「十日間ろくにご飯食べてないんだよなあ」
お腹が鳴って当然なのかもしれない。病院では一切食事をせず点滴任せだった。無理やり食べさせられて吐いたのだ。胃が破壊されていたのかもしれない。
薄い意識の中で医者の声が聞こえていた。「これで済んだのは幸運ですよ。普通はもっと重篤な状態になってますよ」
なんで重篤な状態にならなかったんだろう、死ねなかったんだろう。もしかしてこの肥満体型が、致死量のレベルを上げてしまっんだろうか。死ぬのも難しい。
母親は常にベッドの脇にいて、私のことを心配そうな目で見ていた。たまに涙ぐんでいたりもした。私の入院している病棟は精神科だったから、近隣の部屋からはどんどん、と音がよく響いてきた。看護士曰く、「いつも壁に頭突きしてるんですよ、困りましたね」。
その音でか、意識が戻ったり、薄い膜が張ったように朧になったり。その繰り返しをしているうちに、深く眠ってしまった。
そして今のこの現状に至る。
「とりあえず……お腹がすいたので」
重だるい体を恐る恐るゆっくりと起こす。途端眩暈に襲われ、目を閉じる。目頭を押さえ、数秒の貧血を堪えていると、母親の顔が浮んで消えた。
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